平均的なリターンを得ることは、誰でも達成できます。株式インデックス投資信託を毎月コツコツ購入していくという昔から良く用いられている王道の手法を使えば良いからです。(こちらを参考にしてください)
しかしその上のリターンを目指すこと、市場に勝つことを考えると、途端にそう簡単にはいかなくなります。投資は「科学」であるのと少なくとも同程度に「アート」のような側面があるからです。様々なことに考えをめぐらす必要があります。
ウォーレン・バフェット氏も絶賛している、ハワード・マークス著『投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識 (日本経済新聞出版)』より、投資で一番大切なことの一部、今回は5点をご紹介します。
市場サイクルの原則
市場にはサイクルがあります。以下の2つの原則を忘れてはいけません。
原則1:ほとんどの物事にはサイクルがあること 原則2:利益や損失を生み出す大きな機会は、周りの者が原則1を忘れた時に生じるということ
市場参加者は普段は、行ったり来たりというサイクルがあるということを考えているのですが、振り子が片方に行き過ぎた時になると、「このいい状態が永遠に続くのではないか」と妄想したり、「この最悪の状況がいつまでもずっと続くのではないか」と恐れたりします。
このように、サイクルはなくなった、この状態が長く続くのだと多くの人が考えるようになる時にこそ、利益または損失の機会があるということです。ですので、サイクルがあることを忘れてはいけません。
信用サイクル
不可避で激しく、チャンスをもたらすサイクルを信用サイクルと言います。簡単に言うと、お金の融資に関するサイクルです。
好況期は、世の中全体が楽観的になり、以下のような現象が起こります。
- リスク回避傾向が消える
- 金融機関が供給を拡大する
- 金利の引き下げ競争が起こる
- 本来融資に値しない借り手にも提供する(例:サブプライムローン)
ですので、好況期にこそ最悪な投資をしてしまいます。そしてこれらの最悪な投資が積み重なることにより、信用サイクルは回転していきます。
不況期は、世の中全体が悲観的になり、以下のような現象が起こります。
- 債務不履行が起こる
- リスク回避が強まる
- 金融の引き上げ(ローン貸しはがし等)
不況はずっと続くわけではありません。金融の世界には自律調整力があります。つまり、いずれ好況期とは逆の動きが起こり、好況期へとサイクルが回転していきます。
投資は、人々が「今回は違う」と言った時がチャンスです。記憶に新しいのが、コロナ騒動ですね。「今回のコロナ騒動は、ビジネスが強制的にストップして経済への影響はリーマンショックとはけた違いの暴落が長く続く!!」と多くの人が言っていましたが、このときこそが株式を購入する大チャンスでした。
弱気相場は、次の3段階で回復します。(強気相場から弱気相場への反転はこれの逆)
- まず、先見の明がある一握りの人が、状況が良くなると考え始める
- 次に、多くの投資家が実際に状況が良くなっていることに気づく
- 最後に、全ての人が状況が永遠に良くなり続けると思い込む
振り子の意識
人の心理は振り子のように揺れ動くものです。弱気相場の心理が「恐怖」、強気相場の時の心理が「強欲」。強気に行きすぎたり、弱気に行きすぎたりします。
振り子が動くときは、中心に近くなるにしたがって加速し、中心から遠ざかるにしたがって減速します。そのため、振り子の真ん中の状態にいる期間は短く、人間心理にも当てはまります。
このような心理状態にあるとき、2つのリスクが存在します。
1.損失を出すリスク(弱気相場の「恐怖」心理の時)
投資することを恐れるリスクです。
2.機会を逸するリスク (強気相場の「強欲」心理の時)
この機会(ビッグウェーブ)にのらないと損だと考えるリスクです。
「価格上昇は、麻薬のように、進むべきか退くべきかを判断する理性を鈍らせる」
(ウォーレン・バフェット)
そしてこのような心理の悪影響に対応するため、以下を意識してください。
- 本質的価値を強く意識する。(本質的価値の詳細は【第1回】から)
- 過去のサイクルに関する知識を深め、行き過ぎた相場(好況期)が最終的に報われることはなく、手痛い打撃を受けることを心得る。
なお、逆に暴落したときは掘り出し物を安く買うチャンスです。トレンドの逆を行き、みんなが売っている時に買うということ。これを逆張りと言います。逆張りは、心理的には居心地の悪さを感じるものですが、トレンドの逆を行くことで最大の利益を得られます。
無知の知
ある2人の投資家がいます。1人は将来を「予測できる」と考えている投資家、もう1人は将来は「予測できない」と考えている投資家です。
「予測できる」と考えている投資家は、積極果敢な集中投資をし、借入を高めます。これに対し、「予測できない」と考えている投資家は、分散投資をし、借入に頼らず日ごろから様々な備えをします。
その結果どうなるのかというと、「予測できる」と考えている投資家は、暴落までの数年間に圧倒的に高いパフォーマンスを達成しまします。これに対し、「予測できない」と考えている投資家は、暴落時に十分な準備資金が出来、底値で買って利益を上げることが出来ます。
確かに、将来を「予測できる」のであれば集中投資は賢い選択と言えます。でも本当に予測は出来るのでしょうか??
将来は予測できない、知り得ないことを知りましょうというのが、「無知の知」です。つまり、サイクルが存在すること自体は分かっていたとしても、振り子がどこまでいって、どういう原因でサイクルが反転し始めるのか、ということは誰も分からない、知らないということです。
長期的に投資に成功するための道は、「予測できる」との楽観的な考え方からやみくもにリスクを取ることではなく、リスクをコントロールすることです。長期的に見た場合、ほとんどの投資家の成否は、利益を上げた投資の素晴らしさよりも、損を出した投資の数の少なさとその損失の規模の小ささで決まります。「無知を知る」ことで、巧みにリスクコントロールをすることが大切です。
今、サイクルのどの位置にいるのか
この先どうなるのかは知る由もないかもしれませんが、今、サイクルのどこにいるのか、何が起きているのか、アンテナを張り巡らせておくべきです。それを簡単に評価するための方法として、以下の表の指標を確認してください。
表の左側にチェックが多い場合は、財布のひもを締めた方が良いということです。
本書の詳細は 『 投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識 (日本経済新聞出版) 』 をご参照ください。
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