今回は、過去の実績から証明されている、株式を保有し続けることの重要性、株式の長期投資の本当の強みをデータを見ながら再確認するため、ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』をご紹介します。
長期実質トータルリターンは、株式が圧勝
下図は、1801年から2001年までの過去200年分の、株式、長期債、短期債、金、預金の5資産の実質トータルリターン実績を見ると、株式の実質トータルリターンが圧倒的であることを示したものです。
ここでいう実質トータルリターンとは、物価の上昇によって目減りした分を差し引いた、インカムゲイン、キャピタルゲイン等の合計収益を言います。(⇔物価の上昇を考慮しない場合は「名目」トータルリターン)
1801年にそれぞれの資産を1ドル分買っていた場合、200年で株式は約755,000倍、長期債は約1,000倍、短期債は約300倍、金は約2倍、預金は6%までに目減り(つまり94%目減り)したということです。物価が上昇するインフレ経済の下では、現金を持っているだけでは価値が減るので、何らかの投資が必要だということが分かります。
そして何らかの投資をする際、株式が最も効果的な投資対象となるということです。株式のグラフがギザギザしていることからも分かる通り、短期的には株式は最も値動きの激しい資産です。しかし長期運用を前提とすると、価格変動分が相殺されるという現象が起こります。つまり、株価が上がりすぎると下がり、下がりすぎると上がるということです。これを、平均への回帰と言います。では、長期保有とは具体的に何年運用すれば良いのでしょうか。
保有期間が長期の場合、株式利回りはマイナスにならない
下図は、保有期間別(1、2、5、10、20、30年の場合)に、株式、長期債、短期国債のそれぞれの資産の利回りがどのようになるのかを示したものです。
例えば1年の場合、株式は最高で約67%プラスになる一方、最悪約39%マイナスになることが示されています。かなり振れ幅(リスク)が大きいことが分かると思います。一方長期債では最高約35%プラスになる一方、最悪約22%マイナスになることが示されています。つまり、株式よりは振れ幅(リスク)が小さいことが分かると思います。
そして保有期間が2、5、10、20、30年と長期になるにつれて、グラフが短くなっている、つまり上下の振れ幅(リスク)が小さくなっていることが分かります。長期的には、株式も利回りは安定的になっていくということです。むしろ、長期的には株式の方が債券よりも 振れ幅(リスク)も小さく安定的になります。
さらに、株式は17年以上の保有で損失もなくなります。振れ幅の低い方を見ても、例えば20年では1.0%、30年では2.6%であることが分かると思います。
株価ピーク時に投資しても、長期的には株式のリターンが債券に勝つ
下図は、株式を高値圏で買ってしまっても、長期的にはハイリターンが期待できることを示したものです。
20世紀の株価がピークだった時期(1901年等)に株式を買った場合に、その後10年保有すれば1.18倍に、20年保有すれば2.23倍に、30年保有すれば5.85倍になったということが示されています。つまり、買ったタイミングが最悪だったとしても、債券よりも高いリターンが期待できるということが分かります。 ですので、たとえ株価が下がっても売らずに持っておく、「何もするな、そこにいろ」ということです。
※本書には、長期投資であれば、どの国でも債券より株式のリターンが高いということが記載されています。長期投資が前提であれば、株式100%で良いということです。一方、長期投資が前提でない場合は、債券を組み入れることによって全体のリスクを減らすことができます。
株式の推奨保有割合
下図は、保有期間別、リスクに対する許容度別に株式の推奨保有割合を示したものです。
リスクに対する許容度は、超保守派、保守派、リスク容認派、リスク選好派の4種類示されており、その4種類の人が、1、5、10、30年保有することを前提とした場合に、それぞれ株式を何%保有すべきかが分かります。
例えば、超保守派の人が、1年しか保有しないことを前提とするのであれば、株式は9%程度(表の一番左上)に抑えるべきということです。一方で、リスク容認派の人が30年以上保有すること、リスク選好派の人が10年以上保有することを前提とすれば100%超えています。これはつまり、株式の信用取引でレバレッジをかけて運用するのが良いということです。
※なお最近では、いわゆる「レバナス」といって、ナスダック指数にレバレッジをかけたファンドで運用している方も多いです。ただし、レバレッジ型ETFは金融庁でも注意喚起されている通り、あくまで短期利用で慎重に運用される方が良いと、個人的には思っています。Yahoo!ニュースのこちらの記事もご参照ください。
保有期間別のリスクとリターン
下図は、保有期間別(1、2、5、10、20、30年)に、株式と長期債の保有割合をそれぞれどの程度にすると、リスクとリターンがそれぞれどの程度になるかを示したものです。
例えば30年の線を見ていただくと、100%株式を保有した方が、100%長期債を保有するよりもリターンが高くなり、リスクは低くなるという、どちらも株式が長期債より望ましくなるということが分かると思います。
また、黒丸がついているところが、リスクが最小になる株式と長期債の保有割合を示していますが、保有期間が長期になるにしたがって、100%株式の方に寄っていっているのが分かると思います。つまり、保有期間が長期になればなるほど、株式の保有割合を高めていった方が良いことが、この図を見ても分かると思います。
キャピタルゲイン税の繰延効果
長期投資において無視できないメリット、それが、キャピタルゲイン税の繰延効果です。
例えば、キャピタルゲインを毎年10%得られるとして、30年後に利益を確定するとすると、その時点で初めてキャピタルゲインに対する課税がされます。この場合の税引後の利回りは9.41%です。(注:本書では税率15%として計算)
一方インカムゲイン(配当)を毎年10%得られるとした場合は、毎年インカムゲインに対する課税がされます。この場合の税引後の利回りは8.5%です。(注:税率15%として計算)
つまり前者の、毎年分配を受けずキャピタルゲインとして30年後に一括で課税される方法は、後者の、毎年分配を受け(例えば100のとき)、その課税されて(15=100×15%)少し少なくなったもの(85=100‐15)を再投資するということを繰り返す方法より、長期的に見れば運用効率が良いということが分かると思います。税の繰延効果は、無視できないのです。
本書の詳細は 『株式投資 第4版』 をご参照ください。
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