『キャピタル 驚異の資産運用会社』で紹介されているキャピタル・グループは、アクティブ投資信託の運用会社であり、世界で最も古く、最大の投資運用組織の1つとされています。興味深いのは、本書が チャールズ・エリス及び、バートン・マルキール(まえがき)により執筆されているということです。
チャールズ・エリスといえば、『敗者のゲーム』という、インデックス投資がいかに効率的で、個人投資家にお勧めの投資手法かということ主張した、 ベスト&ロングセラー本の著者でもあります。またバートン・マルキールは、『ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版> 株式投資の不滅の真理 』という、こちらもインデックス投資の良さを主張する「投資の名著」と言われる、ベスト&ロングセラー本を執筆されている方です。
このように、いかにインデックス 投資が良いのかを主張している二人が、 アクティブ 投資信託の運用会社である「キャピタル・グループ」を称賛しているのが、本書です。「キャピタル・グループ」はそれ程の素晴らしい会社だということなのでしょう。本書からキャピタル・グループを2つのポイントでご紹介します。
キャピタル社の強み
キャピタル・グループは、1931年、世界恐慌の直後という時期に創業された、長い歴史を持つ会社です。同社の強みとして本書にあげられているのは主に以下の3つです。
1.マルチマネジャー・システム
単独のポートフォリオ・マネージャーがファンドマネージャーとなって運用する、または委員会体制で運用するのが一般的なのですが、キャピタル・グループでは複数のファンド・マネージャーで運用する体制をとっています。
単独マネージャーであれば、独創性はありますが、多様なアイデアが出ないという問題点があります。委員会はそれと逆で、独創性はない一方、 多様なアイデアが出ます。 両者のいいとこどりが出来るのが、同社がとっている複数マネージャー体制です。
大抵の場合ファンドマネージャーは、自らが運用するポートフォリオに個人資金を投じているので、より真剣に運用を行うモチベーションにもつながっています。
2.非上場
非上場であることによって三方良しを目指すことが出来ます。三方とは、①顧客(ファンドの投資家)、②従業員、及び③キャピタル・グループの株主です。これら三方に対して貢献していくことが、キャピタル・グループの長年の運用方針として掲げられていることです。
上場企業の運用会社であれば、どうしても③キャピタル・グループの株主に利益を還元するという色合いが濃くなるので、①顧客からもっと手数料をたくさん払ってもらうという動機が先立ってしまいます。
非上場だからこそ、キャピタル・グループの理念に沿った行動が出来るということです。そしてその基盤があるからこそ、優れた運用成績を出し続けられているということです。
3.報酬体系
同社の報酬は業界でもトップクラスではありますが、瞬間的な成績ではなく、長期の平均成績で評価されます。
会社全体が好調であれば、全員のボーナスがアップします。そうすることで、皆で一致団結して会社を良くしていこうと考えるので、組織の情報交換が活発化します。また自社の持ち株制度もあり、勤続年数や貢献度に応じて付与されます。
キャピタル・グループが運用するファンドの成績
1.キャピタル・グループのファンド全体
キャピタル・グループの運用するアクティブファンドが、インデックスファンドと比べてどの程度の運用成績なのかについて、確認してみます。
下図は、グレー部分がインデックスファンドの、青部分がキャピタル・グループ のファンドの、それぞれファンドがスタートした時から2018年12月末までの、年平均リターンを表したものです。
これを見ると、青がグレーよりも上に伸びていることが分かると思います。グラフ及びその右に記載の通り、キャピタル・グループの18のアクティブファンドのうち17ファンドまでが、市場の平均であるインデックスファンドよりも運用成績が良かったということです。
アクティブファンドは、手数料が高い分インデックスファンドに勝てる可能性は低いというのが過去のデータから明らかなのですが、キャピタル・グループが運用するファンドには当てはまっていないことが分かります。同社の運用がいかに優れているかということです。
2.世界株式ファンド同士の比較
次に、キャピタル・グループが運用する世界株式のアクティブファンドと、日本でもポピュラーな世界株式の一つであるeMAXIS Slim全世界株式ファンド、そしてネット証券大手の楽天証券とSBI証券のグループ会社が運用するインデックスファンドを比較してみます。
緑枠で囲っているものが、キャピタル・グループが運用する世界株式ファンドです。
各投資信託について、青枠について上から順に見ていきます。
まず手数料について、キャピタル・グループのファンドのみアクティブ・ファンドであり、その他はインデックス・ファンドですので、キャピタル・世界株式ファンドのみ、突出して手数料が高いということが分かると思います。 キャピタル・世界株式ファンドは、販売手数料(買った時にだけかかる手数料)が3.3%なのに対し、他は0%、信託報酬等(保有期間中ずっとかかり続ける手数料)が1.70%なのに対し、他は0.11~0.21%です。
しかし、キャピタル・世界株式ファンドは、トータルリターンが1年で50.46%、3年で24.79%と最も高く、シャープレシオも1年が4.14、3年が1.33と最も高いことが分かると思います。つまりいずれの指標においても、高い手数料に負けない運用成績をあげているということが分かります。
キャピタル・世界株式ファンドは運用成績も14年と長いので、ここ数年の短期間だけ、瞬間風速的に良い成績であったというわけではなく、リーマンショック等も経験してのこれだけのリターン、シャープレシオということです。優れた運用成績を長期間上げ続けることの難しさを考えると、やはり素晴らしいと思います。
本書の詳細は 『キャピタル 驚異の資産運用会社 』 をご参照ください。
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