浦上邦雄著『相場サイクルの見分け方<新装版> ―銘柄選択と売買のタイミング (日本経済新聞出版)』は、普遍的な株式相場の局面推移と、それぞれの局面で主役となる銘柄の種類が解説された、名著です。
本書より、相場の4つのサイクルをご紹介します。
相場の4つのサイクル
相場には4つのサイクルがあります。このサイクルを理解すると、投資のタイミングを読む時にも役に立つと思います。
4つのサイクルとは、①金融相場、②業績相場、③逆金融相場、④逆業績相場です。相場は、この4つのサイクルを繰り返します。(下図参照)

①金融相場と②業績相場が強気相場、 ③逆金融相場と④逆業績相場 が弱気相場です。
強気相場には株価が上がり、弱気相場では株価が下がります。
それぞれのサイクルの中身を詳しく見ていきます。
1.金融相場

金融相場の特徴を一言で言うと、「不景気の中の株高」です。
この時期は、実態経済は上がっていない中、政府の金融・財政面の景気対策、金融緩和の拡大、金利の引き下げ、公共投資の拡大等により、その期待感から株価が上がります。(下図の通り)

金融相場でリード業種になるのは、次の通りです。
- 公共投資関連:直接的に恩恵を受ける業種として、建築土木、不動産関連等がある
- 不況の影響を受けにくい業種:公共サービス、電力、鉄道、食品、医薬品等
- あらゆる業種の、財務の良いトップ企業
直近、新型コロナウイルスのショックで実態経済にダメージが生じて株価が下落した際、政府による追加金融緩和等が行われました。
この2020年春以降の時期は「金融相場」であったと言えます。2020年春頃は、まだまだ先行きに不安感がある時期でした。
「強気相場は悲観の中に生まれる」
金融相場の上げ相場は、先行き不安感があるときから始まりまるということです。
2.業績相場

業績相場は、企業の業績という実態が伴った株価上昇期です。
政府による金融緩和等の影響を受け、様々な経済指標が好転し始め、GNPも回復に向かいます。これらの指標の好転から1年程のタイムラグの後、企業の業績も回復し始めます。このような景気の底入れが確認されれば、金融相場の終わり、業績相場の始まりです。
この時期は、金融緩和が行われていた状態から少しずつ引き締めの方向に舵がきられ始めますが、これまでの金融緩和の影響もあり、企業の業績は上がり、ある程度長期間株価が上昇し続けます。(下図参照)

業績相場でリード業種になるのは、次の通りです。
- 業績相場の前半は素材系:繊維、パルプ、化学、ガラス、鉄鋼等
- 業績相場の後半は加工業:機械、電機、自動車、精密機械等
・・・・・
2021年12月現在は、この「業績相場」にいると思います。
米国では、2021年11月に テーパリング を開始しました。
これまで毎月1,200億ドルの米国債等を買い入れる量的緩和を続けていましたが、2021年11月のFOMCで、FRBは11月末、12月末は毎月150億ドルずつ、2022年1月以降は毎月300億ドルずつ米国債等の買い付け額を減らしていくテーパリングを決定しました。順調に行けば、2022年3月末にもテーパリングが終了することになります。

これは、金融緩和を縮小していく方向に舵が切られたことになりますので、先に記載の「業績相場」の特徴に合致します。
また、 FRB パウエル議長は、利上げは現時点では時期尚早であるとする一方、来年3回の利上げの可能性があることも示唆しています。
日本はというと、相変わらず金融政策の変更はありません。そのため、日本の為替、長期金利、株価等は、海外の金融政策の観測によるという状況が、今後も続くと思います。
・・・・・
3.逆金融相場

逆金融相場は、金融引き締めがきっかけになります。景気が過熱気味で、企業の業績は大幅増益予想がされている頃です。ただし、強気相場から弱気相場に移る要因は複雑で、様々あります。
この時期は、金融引き締めが行われるので、金利が上昇します。景気が過熱しているため、業績はまだ良い状態ですが、株価は実態に先行して動くため下がります。(下図参照)

逆金融相場では、景気変動に敏感な素材株、借金比率の高い電力株等が特に下がるといわれています。
この時期は新規投資を控え、キャッシュ又はキャッシュに近いものを持っておくようにしましょう。残しておくべき株式は、優良株のみです。
「強気相場は幸福感の中で消えていく」
4.逆業績相場

逆業績相場は、相場の冬にあたる時期です。
この時期、企業の業績が悪くなるので、逆業績相場の最終局面に近づくほど株価の割高感が高まります。減益という実態を伴って、株価が下がります。また景気の過熱感が落ち着き始めるため、金融引き締めが落ち着き、金利が下落します。(下図参照)

逆業績相場では、平常時に割高な優良株も株価が下がりますので、絶好の買いのタイミングです。なお優良株とは、財務が強く、競争力が高く、業界トップ企業の株を言います。また、次の「金融相場」の恩恵を受けられる金融関連株も買うと良いです。

・・・・・・・・
本書には、「タイミングを捉える」、「機関化現象に揺れる株式市場」等、当ブログでは紹介しきれていないテーマが、他にも様々書かれています。
本書に興味を持っていただいた方、詳細は 『相場サイクルの見分け方<新装版> ―銘柄選択と売買のタイミング (日本経済新聞出版)』 をご参照ください。
☆関連記事