財務諸表を読む力が、株式投資成功への鍵になります。なぜなら、財務諸表を読めば、その企業の財政状態及び経営成績を知ることが出来るからです。
メアリー・バフェット、デビッド・クラーク著『史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール』には、永続保有できる優良株の見つけ方が書かれています。本書を次の2つのポイントでご紹介します。
- 損益計算書の読み方
- 貸借対照表の読み方
損益計算書の読み方
損益計算書とは、企業や団体の、一定期間(通常1年間)における費目別の収益と費用とを対照表示し、当期純損益がわかるようにまとめた表です。
損益計算書は下のイメージ図の通り、売上から始まり、様々な原価、費用、損益を加減算して、最終的に当期純利益を求めるものです。
(注:例えば金融機関の場合、売上にあたる部分が「経常収益」と表示される等、業界によって損益計算書の作りは多少異なりますが、どの企業の損益計算書も、最終的に当期純利益を求める点は同じです。)
バフェット氏は、損益計算書について、次のような指標を用いて評価します。
1.粗利益率40%を超え続けている
粗利益率の求め方は以下の通りです。
粗利益(上図の「売上総利益」)率 = 粗利益 ÷ 売上高 × 100
粗利益率が40%を超え続けている企業は、優位性のあるビジネスモデルを持つことが多く、20%を下回る企業は、競争の激しい業種である可能性が高いと考えます。
2.販管費が粗利益の30%以下である
販管費には、販売経費、一般経費、管理経費、人件費、広告宣伝費、手数料等が含まれます。
販管費は低ければ低いほど良く、粗利益の30%以下なら優良企業であると考えます。
販管費が粗利益の100%を超えるような企業、すなわち通常の営業で赤字が出るような企業は、所属業種の何らかの競争に巻き込まれている可能性があります。
3.特別損益は度外視して評価するべきである
特別損益とは、 臨時に発生する損益や固定資産の売却損益などのことですので、来期以降も起こる可能性はありません。イレギュラーな損益ですので、評価する際には度外視するべきです。
4.売上高純利益率が20%を超えている
売上高純利益率の求め方は以下の通りです。
売上高純利益率 = 当期純利益 ÷ 売上高 × 100%
売上高純利益率が一貫して20%を超えている企業は優良企業であり、10%を下回る企業は過当競争に巻き込まれている可能性があります。10%~20%の企業はグレーゾーンであり、金の卵を発掘できる可能性があります。
5.EPSがどれだけ上昇した
EPS (Earnings per share) とは、一株当たり利益で、求め方は以下の通りです。
EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式総数
EPSが上がるということは、一株当たりの利益が増えたということなので、株価は上がります。EPSがどれだけ上昇したかを確認することで、株価の動向を予測することが出来ます。
6.多額の研究開発費を要さない企業である
多額の研究開発費を要する企業は、競争優位性に先天的欠陥を内包していると、バフェット氏は考えています。
一見永続的競争優位性のように見えるものが、実は特許や先進技術を源とする一時的優位性であることが多いからです。
貸借対照表の読み方
貸借対照表とは、企業や団体の、ある時点(普通は会計上の期末)の財務状態を、資産の部を左側に、負債及び資本(基金)の部を右側に記し、総合的な損益額も明らかになるようにまとめた表です。(下図参照)
損益計算書が、一定期間の経営成績を示すのに対して、貸借対照表はある時点の財政状態を示します。つまり損益計算書が「線」、貸借対照表は「点」というイメージで、下図の通りです。
バフェット氏は、貸借対照表について、次のような指標を用いて評価します。
1.大量の現預金と有価証券を保有し、借入金がほとんどない
大不況が来た時には、現預金が最大の武器になります。そのため、大量の現預金と、すぐに現金化できる有価証券(流動資産)を保有し、返済するべき借入金(負債)がほとんどない企業は優良であると考えます。
2.永続的優位性のある企業は、棚卸資産と純利益が共に増加する傾向がある
棚卸資産は、「資産」のうち「流動資産」に表示される項目です。
純利益は、損益計算書で最終的に求められるものです。
純利益は、貸借対照表上では「利益剰余金」の増加分として認識されます。「利益剰余金」は、「純資産」の一部ですので、純利益が増えると「純資産」が増えます。
3.のれんが長期にわたって増加している
ある企業が別の企業をその純資産よりも高い金額で買収した場合の、その超過分がのれんとして計上されます。
つまりのれんは、企業が価値が高い(と評価されている)企業を買収した場合に生じるものです。
のれんが長期にわたって増加している場合は、その企業が積極的に買収を進めているということであり、それだけの財力、成長力があることの証明である好ましい状況であると、バフェット氏は考えています。
(注:のれんは、日本基準では毎期償却されるので、追加で買収しなければ、時間が経過するごとにのれんの値はどんどん小さくなっていきます。一方米国基準、国際会計基準では毎期償却しないため、のれんの価値(超過収益力)が下がったと判断される「減損」が生じるまでは、のれんの値は一定です。)
4.内部留保の増加率が高い
内部留保とは、利益剰余金です。
利益剰余金を簡単に言うと、企業が設立されてからその時点までに積み上げられてきた純利益の合計から、分配した配当金の合計を差し引いたものです。
つまり内部留保は、純利益が積みあがる状態であり(儲かっており)、かつ、配当として分配せずに蓄えている場合に増加率が高くなります。
「バークシャー・ハサウェイの成功要因は、バフェットが経営権を掌握したその日に配当の支払いを取りやめたことにある。・・・絶好の機会がやってくるたび、この内部留保を投資に充てたのである。」
5.ROAが高すぎるのは注意
ROA (Return On Asset)とは、会社の総資産を利用して、どれだけの利益を上げられたかを示す数値です。求め方は以下の通りです。
ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100
あまりにROAが高い場合は、競争優位性の脆弱さを表している場合があります。
なぜなら、少ない資産でも始められる障壁の少ないビジネスである可能性があるからです。
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本書に興味を持っていただいた方、詳細は 『史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール』 をご参照ください。
また本書の英語版は 、『Warren Buffett and the Interpretation of Financial Statements』です。
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