『貯金40万円が株式投資で4億円――元手を1000倍に増やしたボクの投資術』の著者かぶ1000さんは、バリュー投資を得意とする、投資歴30年以上のベテラン投資家です。
本書を5つのポイントでご紹介します。
バリュー投資とは
株式投資の手法は、大きく分けてファンダメンタルズ分析とテクニカル分析があります。
かぶ1000さんが得意とするのは、 ファンダメンタルズ分析 、中でもバリュー投資です。
グロース投資とは、将来この株は大きく成長(グロース=growth)するだろうと考えて投資するもので、大化け株などを狙う手法です。
一方バリュー投資とは、その株式の持つ本質的価値が、今現在の株価に比べて割安である場合に、「株価が本質的価値相当額に近づくにつれて利益が出る」と考えて投資する手法です。派手さはないものの着実な方法と考えられています。
なお、著者は年利20%程度の運用利回りを目標としています。30年という長い時間をかけて、元手40万円を4億円に増やした方法ですので、再現性の高い方法だと考えて良いと思います。
アマゾンのページ及び、かぶ1000さんのブログのデータをもとにして、かぶ1000さんの資産推移表を作成したところ、以下の通りになりました。
中学2年生の時に、5歳から貯金していた40万円を元手に株デビューし、中学3年生で300万円、高校1年生で1,000万円、高校2年生で1,500万円、30歳で3,000万円になりました。2011年には億り人となり、2015年に3億円、2019年に4億円を突破しています。
なお、かぶ1000さんが本格的にバリュー投資を始めたのは2001年。2001年当時は、高校2年生の時に1,500万円あった資産が、ITバブル、9.11テロ、アジア通貨危機などの影響で、600万円まで減っていました。株で利益を出す方法を、懸命に模索していました。
かぶ1000さんの運命を変えたのが、ベンジャミン・グレアム著『賢明なる投資家 – 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法』です。 ベンジャミン・グレアム 氏は、ウォーレン・バフェット氏の師匠にあたる方です。この本との出会いにより、かぶ1000さんはバリュー投資を確信し、順調に資産を増やせるようになりました。
『賢明なる投資家 – 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法』 には、リターンはやはり株式が高いということ、そして長期的に投資をするのであればバリュー株が最もパフォーマンス(リターン)が良いということが書かれています。
かぶ1000さんは現在もバリュー投資を実行し続け、かぶ1000さんの資産は増え続けています。 彼のブログ を見ると、どの個別株に何株投資しているのかが分かります。
2種類のバリュー投資
企業の本質的価値には、①現在所有している資産と、②稼ぐ力(その事業が今後どれくらい稼げるのか)の2種類あります。人に例えると、資産が多い人が①、年収が高い人が②です。
そのため、一口にバリュー投資といっても次の2種類に分けることが出来ます。
1.資産バリュー投資
資産バリュー投資とは、現在所有する資産がどれくらいあるかを拠り所として、株価が割安かどうかを判断する投資手法です。
現在所有している資産は、今ある確実なものであり、また例え1年業績が悪かったとしても、資産が急激に悪化するということはありません。そのため、安定性の高い投資手法と言えます。
2.収益バリュー投資
収益バリュー投資は、稼ぐ力を拠り所として、株価が割安かどうかを判断する投資手法です。業績の良し悪しで判断するため、コロナ禍等の外的要因、強力なライバルの出現等で毎年変動します。
かぶ1000さんが得意としているのは、資産バリュー投資です。
資産バリュー投資の3つの視点
資産バリュー投資をする上では、財務諸表(中でも貸借対照表と損益計算書)を読める必要があります。資産バリュー投資においては特に、「資産」項目が表示される貸借対照表を読めることが大切です。
ここでは3つの視点をご紹介します。
1.現金預金
現金及び預金が、総負債よりも多ければ、不況や外部要因の変化にも強く、資金的にも余裕があると評価できます。
基準① 現金及び預金 > 総負債
2.有価証券
特に上場株に注目します。自社の時価総額以上の株式を持っていれば資産バリュー株の対象です。
例えば、昭栄薬品(3537)の時価総額は35.9億円(3579千株×@1,001円(2021年12月22日時点))なのに対し、 昭栄薬品(3537)が保有している花王の株式時価は42.1億円(69万株(出所:irbank.net)×@6,103円(2021年12月22日時点 )です。
基準② 保有有価証券 > 時価総額
3.賃貸用不動産や土地
特に一等地で簿価が安い不動産に注目です。財務諸表に反映されていない、多額の含み益があると考えられるためです。
貸借対照表に表示される建物等の簿価は、(取得価格 ー 減価償却累計額)です。土地の簿価は取得価格です。不動産は、販売用でない限り時価は反映されません。そのため特に一等地の不動産は時価が高いので、簿価と大きく乖離している可能性があります。
基準③ 不動産の時価 >> 不動産の簿価
グレアム指数の基準値
PER × PBR = グレアム指数
PERは1株当たりどれだけ利益が出ているか、PBRは1株当たりどれだけの価値(=純資産)があるのかを示す指標です。
PER、PBR共に割安であることを示すのが最も良く、一般的には、グレアム指数が22.5未満で割安だと判断されます。かぶ1000さんは、この指数の基準値を5.0未満で割安と判断します。結構厳しい基準です。なお、グレアム指数5.0未満の株は、バフェットコードで日米銘柄をスクリーニングすることが出来ます。
(注:日本株のスクリーニングは無料ですが、米国株スクリーニングは有料です。また、「未満」という条件設定は出来ません。下図では「PER×PBR≦5」としています。)
かぶ1000流投資スクリーニング法
かぶ1000さんは、投資する株式をスクリーニングする際、以下のような方法を取ります。
- 四季報を活用する
- 有価証券報告書(EDINETを活用する)を過去10年以上分読む
- 決算短信を読む
これらの情報から、投資する銘柄が割安かどうかを判断します。割安かどうか判断する際は、「横の比較」「縦の比較」「市場の比較」を行います。
「横の比較」とは、現時点での比較で、異なる業種間や同じ業種内で PER 、 PBR を比べることです。
「縦の比較」とは、同じ銘柄で過去からさかのぼったその銘柄特有の評価のことです。その会社の歴史上において、今現時点の PER 、 PBR は高いのか安いのかを判断します。
「市場の比較」とは、東証一部、二部、マザーズ、ジャスダックでの指数の評価のことです。日経平均、ジャスダック、マザーズに含まれている銘柄の中で、どこに割安銘柄があるかを探すために評価していきます。他の指数に比べて伸びが悪い指数の中には、割安銘柄が隠れている可能性が高いからです。
その他以下の方法により、数字から分かる情報以外の情報を、収集することが出来ます。
- 着目した会社の商品・サービスを体験する
- 企業が保有する土地や建物を見学する
- グーグルストリートビューで周辺環境をチェックする
- IR情報を読む
- 不明点はIR担当者に電話で質問する
- 株主総会に出る
- IRフェアに出向く
本書の詳細は 『貯金40万円が株式投資で4億円――元手を1000倍に増やしたボクの投資術』 をご参照ください。
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