チャーリー・マンガー氏は、元々気象学者、弁護士として活躍されていた方なのですが、弁護士では本当のお金持ちにはなれないと悟り、 ウォーレン・バフェット氏との出会いをきっかけに金融の世界にキャリアチェンジされた方です。
マンガー氏は、副会長としてウォーレン・バフェットが経営するバークシャー・ハザウェイに長年関わって来た同社のナンバー・ツーと言われている方です。本書を読むと、 マンガー氏は「バフェットの右腕+左脳」とでも呼びたくなるような、重要な存在であることが分かります。
「チャーリーの最大の功績は、今日の バークシャー・ハザウェイ を設計したことである。彼が私に示した青写真はシンプルだった。そこそこの会社を割安な価格で買おうとするのではなく、素晴らしい会社を適正な価格で買いなさい - この指示通りに投資事業を進めてきた結果として、現在のバークシャーがある」
(ウォーレン・バフェット)
『マンガーの投資術』は、マンガー 氏 のスピーチ、書籍、ブログ、格言サイト等、入手可能な様々な情報源から集められたものが収録されています。
グレアムの間違い
ベンジャミン・グレアム 氏は、ウォーレン・バフェット氏の師匠にあたる方です。
グレアム氏の主張は、割安な銘柄(バリュー株)を買うということです。バリュー株を買うとは、下図のように、株式の価格がその本質的価値よりも低い場合に投資するというものです。
しかしこの考え方によると、価格が上がって 本質的価値よりも高くなった時、すぐに「売る」という判断をすることになります。しかしこれが、グレアム氏の考え方の弱点であるとマンガー氏は言います。なぜならこの考え方では、株価がさらに上がる場合の利益を、逃すことになりかねないためです。(機会損失)
そこでマンガー氏は、グレアム氏のバリュー投資の考え方に、グロース投資の考え方、つまり「偉大な企業であれば、その本質的価値自体が成長する」という考え方を取り入れました。
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なお、グレアム氏が投資家として活躍していた時代は、1929年の世界恐慌とも重なります。
世界恐慌時、ダウ工業株平均は1929年9月3日に最高値381.17をつけたあと、1か月間急降下し、11月13日に198.60の底値を記録しました。実に48%の下落です。このような時代背景であったので、グレアム氏の「割安な銘柄を買う」というバリュー投資が、当時非常にフィットしていたのだと思います。
現金が鍵
「投資の好機が訪れた時に、すぐに行動が起こせるように、いつでも1,000万ドルの(現金)残高を」
(チャーリー・マンガー)
「1,000万ドル」とは10億円超なので、個人投資家としてあまり現実的な数字ではありませんが、このマンガー氏の主張は、絶好の機会が訪れるチャンスに備え、なるべく多めに預金をもっておくべきということです。そして、チャンスが来たと思ったら、その預金を使って一気に賭けに出ます。
一方、一般的なファンドでは、巨額の資金を預金として持っていては利益をうまないため、機会損失であり勿体ないと考えます。どこかに投資をしなければなりません。(=フルインベスト)
「良いアイデアはめったにない。勝算が高いと思ったら大きく賭けるべきだ」
(チャーリー・マンガー)
つまり、勝算があるときにだけ、賭けるという規律を守るということです。株価が暴落している好機を逃さず、大きく賭ける、多く買うということです。
忍耐
投資を成功させるには、忍耐が必要です。
- 偉大な企業の株価が下落して、適正な水準になるまで待つこと
- 一度買ったら、大きな投資成果を上げるまで、売らずに辛抱強く持ち続けること
目当ての銘柄が適正な水準になるまで「待つ」とは、たとえ5年でも辛抱強く「待つ」ということです。
バフェット氏の事例では、1960年代後半に一旦市場を離れ、次に購入するまで5年待ったこともあったそうです。周りから「もはや彼らの輝きは失われた」と言われても、虎視眈々と待つのです。この忍耐が大切です。
待つことは難し
「忍耐強く、その日が来るのを待たなければならない。待つことにはお金はかからないのだから。でも、1日中何もせずに座っていることは、人間の本質に反する。色々とすることがある方がずっと楽だ。何もせずに5年も待ち続けることを想像してみて欲しい。自分が無力で、何の役にも立たない存在であると思えてくるはずだ。だからこそ、人は愚かなことをしてしまうのである。」
(チャーリー・マンガー)
マンガー氏が、いくら待つことが重要であると言っても、例えそれを知っていても、それを実行するのは難しく、出来る人は非常に少ないのです。
「もし人々がこれほど頻繁に間違えなかったら、私たちは大した金持ちにならなかっただろう」
(チャーリー・マンガー)
時折起こる大暴落によってマーケットが過小評価され、様々な銘柄がかなり割安になることがあります。それこそが、絶好の投資機会なのです。この様な機会に、皆と同じ行動をとっていれば平凡から抜け出せません。マンガー氏は、皆が売っている時に買います。(逆張り)
大きく稼ぐ方程式
割安な価格のそこそこの会社より、適正価格で売られている偉大な会社を買うべきです。
例えば下図左側の通り、現在の一株当たり純利益が100円の株式、A、Bがあるとします。
A株が、比較的成長率の高い優良株で、PERが20とします。
B株は、Aに比べて低成長率で、PERが10とします。
この時100万円持っているとすると、A株は500株、B株は1,000株買えます。
成長率もPERも10年間変わらないと仮定すれば、10年後はA株を持っていた方が利益が出ると考えられます。(上図右側、159万円>63万円)そのため、「 割安な価格のそこそこの会社(B株)より、適正価格で売られている偉大な会社(A株)を買うべきだ」ということです。
本書の詳細は 『マンガーの投資術』 をご参照ください。
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