『60歳までに「お金の自由」を手に入れる!』の著者、榊原正幸さんは、43歳まで貯金0だったのに50歳でリタイア可能になった、元大学教授、会計学博士です。
本書は、若くしてFIREを目指すという他のFIRE本と異なり、60歳までに「お金の自由」を手に入れるというコンセプト、FIRA60(Financial Independence Retire Around 60 = 60歳前後でお金の自由を手に入れて、早期退職する)です。
昔は60歳退職が当たり前でしたが、今は65歳まで働くのが普通になってきました。年金支給開始年齢もどんどん後ろ倒しになっていて、「一生働くのが当たり前」になりつつある昨今、70歳まで働くのが当たり前になる日もそう遠くないかもしれません。
・・・とはいえ、70歳まで働きますか?働きたいですか?
本書を次の5つのポイントでご紹介します。
- FIREブームへの根本的な違和感
- 「FIRA60」を目指す
- 「イヤじゃない仕事」とは
- なぜ、60歳までなのか
- インカムゲインとキャピタルゲインの両取りを狙う
FIREブームへの根本的な違和感
昨今一般的に言われているFIREは、一生貧乏になる可能性があるという問題があります。「しっかりと節約生活をして生活費の25倍を貯めましょう、そうすれば、FIRE出来るようになる」というものだからです。
FIREするまでにかなりの節約をする必要があり、そしてFIREし終わった後も、生活費の25倍という元本を毀損しないために、その元本から得られる4%程の配当などのキャッシュフローの中で生活をするという4%ルールの制限の中で生活することになります。
つまり、一般的にいわれているFIREでは、FIRE達成前も後もずっと、節約生活が強いられることになります。そのようなFIREは、ミニマリスト的な生活がセットになっています。「早く」退職することにこだわるあまり、一生貧乏なのです。
本当に、一生それで良いのでしょうか。そもそも「早く」退職したいのは、仕事がイヤだからではないでしょうか。
それなら、早く「イヤじゃない仕事」をするために転職し、その上で60歳まで働けば良いのではないでしょうか。イヤじゃない仕事であれば、それほどストレスをためずに、60歳まで働くことが出来るはずです。

「FIRA60」を目指す
若くして仕事をやめて、時間もお金もある状態になったとしても、退屈ですし、社会とのつながりも無くなってしまいます。また、せっかくの若い有り余るエネルギーを持て余してしまうのではないでしょうか。
60歳前後での引退であれば、お金も時間もあったとしても、社会貢献も十分した後なので、ちょうど良いのです。
著者は既に60歳を過ぎていますが、ふりかえって考えても、若い頃はたとえお金があったとしても、労働をして、エネルギーを社会貢献に使った方が良いと言います。
「イヤじゃない仕事」とは
仕事には、「好きな仕事」、「嫌ではない仕事」、「嫌な仕事」の3種類あります。
そして世の中のほとんどの人は、「嫌な仕事」もしくは「嫌ではない仕事」をしているのではないかと、著者は言います。一部の人しか「好きな仕事」をしていないのだと。
「好きな仕事」をしている人は、そもそもRetire Early(早期退職)とは言いません。
例えば、手塚治虫さんは、次の言葉を死の直前に言っていたそうです。
「頼むから仕事をさせてくれ。」
彼が仕事をする理由は、お金とか名誉とか、そんな次元ではありませんでした。ただ漫画を描くのが好きだから、ずっと漫画を描いていたいから、漫画家をしていたのです。
「好きな仕事」を見つけるのはそう簡単ではないかもしれません。でもせめて「嫌ではない仕事」で60歳まで働き、60歳で引退できるようにしませんか?

なぜ、60歳までなのか
たとえ今「嫌な仕事」をしていたとしても、60歳に向けて、徐々に自分にとって条件の良い、「イヤじゃない」仕事へ移っていくようにしましょう。
そして、60歳になったら引退するようにしましょう。
60歳の後、残りの健康寿命は、男性の場合約12年、女性の場合約15年だと言われています。健康でなければ何も出来ません。残り十数年の健康寿命を使って、仕事ではできなかった「やりたいこと」をやるのです。
本書では、60代こそ「第二の青春」だと言っています。無理して70歳まで働いてお金を貯め続けるより、60歳で引退して、身の丈の生活をするのが良いのではないでしょうか。
そうすることで、人生全体で見た時の幸福度は高くなると思います。
インカムゲインとキャピタルゲインの両取りを狙う
本書が推奨する資産運用は、インカムゲインとキャピタルゲインの両取りです。このうち特に、インカムゲインを重視します。
インカムゲインは「氷山の一角」と言われています。氷山は、目の前に見えているものと比べ物にならないほど大きな塊が水面下にあります。目に見えない水面下の塊という「元本」があるからこそ、毎年安定的に「氷山の一角」であるインカムゲインを得ることが出来ます。現役時代は、ひたすら再投資を繰り返すことで、「元本」を大きくしていきます。
本書では、インカムゲイン(配当)を基本としますが、株価が安値の時に買って、その1~2年後に高値で売却することによりキャピタルゲインを得る戦略を併用することを推奨しています。
なお、「キャピタルゲインを得るために売買する銘柄」とは、①プライム市場で取引されている、②国際優良企業であり、③財務優良企業です。

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私は、25歳の時にいわゆる寿退社をして、専業主婦になりました。1人で経済的に独立するFinancial Independenceとは少し違いますが、経済的に心配する必要がない状態で早期退職をしたという点で、FIREと似ていると思います。
結婚相手が、政治家、名家、経営者等ではない普通のサラリーマンで、子供がいない専業主婦というのは、本当に毎日ほとんどの時間、自由です。
「結婚に伴い引っ越すから」という建前はあったにせよ、主たる理由が「専業主婦をやってみたいから」というだけの贅沢な理由で、家事が苦手で専業主婦としてはほぼ無価値の私が、仕事をやめ、専業主婦をさせてもらえたんですね。
専業主婦になった時は、毎日読書したり、散歩したり、勉強したり、海外ドラマを見たり、あとはパパっと家事すればいい、毎日さぞ楽しいだろうとワクワクしていました。でも、そんな生活に半年で飽きて、結局仕事を再開することになります。
なぜ、そうなったと思いますか?
私が読書や勉強、海外ドラマが好きなのは、成長欲求が強いからです。こんなことが分かるようになった、こんなに英語を聞き取れるようになってきた・・・等々。それが楽しいんですね。そして成長欲求が強いのは、それを仕事で社会に還元することで、評価やお金や感謝という形で戻ってくるのが嬉しいからです。
つまり私の場合、仕事がないと「成長」それ自体の目的を失うことになるんですね。だから、それまで楽しかった読書も勉強も、海外ドラマも、以前ほど楽しめなくなっていました。「あれ?何のために読書したり勉強したりするんだっけ??」という感じ^^;
だから、早々に社会復帰したのです。人とのつながりも欲しかった。
仕事をやめて初めて、仕事は人生になくてはならないものだということに気づきました。仕事とは、本来嫌々するものではないのです。仕事は本来楽しむべきものなのだと気づいてから、自分に向き合って、自分が好きで得意で、一人前に稼げる仕事を探しはじめました。なんちゃってFIRE体験がなければ、私は多分ずっと、「お金を稼ぐために」漫然と仕事をしていたでしょう。
だから、FIREを目指し、それを達成することは良いと思っています。FIREを達成して実際に自由を手に入れてみると、自分の心の本音が見えてくると思うのです。
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著者のブログは(兜町大学教授の教え (prof-sakaki.com))です。
本書に興味を持っていただいた方、詳細は『60歳までに「お金の自由」を手に入れる!』をご参照ください。著者の考える「安全・堅実な投資先リスト」も、本書内にあります。
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