投資家に本当の利益をもたらすのは、企業の成長ではなく、永続する会社(グローバル大企業)であるというのが、ジェレミー・シーゲル著『株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす』の結論です。市場平均を上回るリターンを得るためのヒントとして、本書より、次の3つのポイントでご紹介します。
- 成長の罠
- 結局は配当
- インデックスを超える
成長の罠
下図は、PwCによる予測GDPの世界順位です。なおこのGDPは、PPP(購買力平価)ベースです。(一般に、平均生活水準の指標、またはモノの出入りの指標としては、相対的な価格差を正確に測定できるPPPベースのGDPが適切とされています。)
日本を青枠で囲っていますが、GDPの順位は、現在の世界第4位から、2050年には8位まで落ちることが予想されています。米国も落ちます。1位、2位は中国、インドになります。
このデータを踏まえて、成長国や成長産業へ投資するべきかというと、そうとは限りません。成長国、成長産業が儲かると考えることを、「成長の罠」と言います。
例えば、20世紀半ばのIBM株とオイル株を比較すると、リターンが良かったのはオイル株でした。成長したのは、イメージ通りだと思いますがIBMでした。なぜオイル株の方が儲かったかというと、IBMの株価が高すぎたからです。高すぎたので、成長しても株価はあまり上がらなかったということです。この例から分かることは、成長国、成長産業への投資が儲かるとは限らないということです。
この例はセクター単位の「成長の罠」ですが、国単位でも「成長の罠」はあります。例えば下図は、中国株とブラジル株のリターンとGDP成長率を表したものです。
この図から読み取れることは、1992年から2003年までの中国のGDP成長率は高い(86%)にもかかわらず、中国株のリターンはむしろマイナスであった($1,000→$320)こと、一方同じ期間のブラジルのGDP成長率はマイナスであった(‐6%)にもかかわらず、ブラジル株のリターンはプラスであった($1,000→$4,781 )ということです。
つまり、成長していない国に投資していた方が、むしろ儲かったということがいえます。
その理由は、1990年代当時から中国は将来伸びると言われており、中国株への期待値、つまり株価が高くなりすぎていたので、リターンがひどいことになったということです。
ここから言えるのは、ハイリターンを得るためには、成長率の高さを評価すると共に、株価が高すぎないかということも確認する必要があるということです。
「株式の長期的なリターンは、増益率そのものではなく、実際の増益率と、投資家の期待との差で決まる」(by 著者)
結局は配当
会社は事業によって得た利益を、配当したり、内部留保したりします。いずれの使い方をしたとしても、株価にはプラスに働きます。
前回【株の知識③】では、毎年配当を受ける場合と最後にキャピタルゲインを得る場合のトータルリターンが同じであるとすると、 前者は毎年課税されるのに対し、後者は最後に売却するまで課税が繰延べられる分、後者の方が税金の観点からは有利であると書きました。
しかし、同じ著者が書いた本書では、そうはいっても配当が大事だと主張されています。
なぜなら・・・
「1971年から2003年にかけて、株式累積リターンの97%は、配当再投資が生み出した。値上がり益は3%に過ぎない」から。
インデックスを超える
基本的にインデックス投資がコアの戦略ではあるのですが、D-I-V指針を活用してインデックス投資に+αとして補完する株式を買うと、インデックスを超える成果を出せると書かれています。
D-I-Vとは、Dividend(配当)、International(国際)、Valuation(バリュエーション)です。簡単に言うと、高配当(D)、多国籍(I)、低PER(V)株を買うと良いということです。
また、投資先に選ぶセクターとしては、次の3つが推奨されています。
1.エネルギー(石油)
クリーンエネルギーへの転換が進んでいってはいるものの、人類がすぐに石油を手放すことも考えにくく、まだまだ需要のあるセクターだと思います。
下図は、VDEという石油関連銘柄のETF価格です。2020年から直近にかけて、大きく値を上げています。
2.ヘルスケア
ヘルスケアセクターは歴史的に見て極めて優秀なリターンをだしています。
下図は、VHTというヘルスケアセクターのETF価格です。5年間、右肩上がりです。
3.生活必需品
生活必需品に関する銘柄です。歴史的に見て、ヘルスケアセクターに次ぐ、極めて優秀なリターンを出しています。 例えば、P&Gやコカ・コーラ等があります。
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シーゲル氏は、インデックス投資:D-I-V及びセクター銘柄=50:50とすることを推奨しています。
つまり、インデックス投資を50%とし、残りは高配当(D)株、多国籍(I)株、低PER(V)株 、推奨セクター株のそれぞれを、ポートフォリオの10%~15%前後ずつとするというのが目安です。一つの指標として参考にしてください。
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本書に興味を持っていただいた方、詳細は 『 株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす 』 をご参照ください。
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