ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、円安方向に進み始め、2022年9月1日には、ついに1ドル140円を突破しました。このような急激な円安や少子高齢化、賃金が上がらないことによる格差の拡大、次世代の産業が育っていない等、日本の経済の先行き不安の声は多くあります。
世界第2位の経済大国という地位を中国に奪われ(それでも3位)、失われた20年、30年、40年等と言われ、悲観ムードが漂っています。このままでは円が紙くずになる等と煽り、外国への投資、特に米国投資を勧める声も多くあります。私も、S&P500や世界株式にかなり傾斜をかけて、投資をしてきた一人です。私も、日本の将来を楽観しているわけではないからです。
しかし、日本視将来が楽観視できないからといって、日本以外の国の将来が安泰かというと、そうではありません。世界中のインフレ問題、中国の不動産及び少子化問題、急激に悪化している韓国経済、ヨーロッパのエネルギー問題等。インフレを例にとると、世界中があれほどインフレに苦しんでいる中、日本の物価の上昇はなんと穏やかなのでしょうか。
下図を見ると、2022年7月の消費者物価指数は、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、韓国は、6%~9%の高インフレ率ですが、日本と中国は2%台だということが分かります。
米国は、インフレ抑制のために金利を上げ続けているので、今後数年間は、米国株式が下落傾向になる可能性が高いです。そんな中、1ドル140円まで進んでしまった弱い円で、あえて米国株式を買う意味はあるのだろうかと、ふと思ったのです。
そこで、改めて日本株に目を向けました。日経平均225のデータをとり、過去からのトレンドを見てみると、今の日本がいかに安いのかと思ったのです。
日本株は割安
1.PBRが安い
2022年9月2日の日経平均225のPERは12.63倍、PBRは1.15倍、そして配当利回りは2.5%です。このうち特にPER1.15倍というのが、かなり割安だと思います。
PBRが1倍や1倍未満というのは、今この瞬間に会社が解散した場合でも、株価と同額又は同額以上回収できるということです。そのため、普通に営業をし、毎期利益を上げられるような優良企業であれば、PBRは1倍よりも大きくなるはずです。日経平均225に採用されている銘柄は、日本を代表する優良企業225社なのですが、この優良企業集団である日経平均225のPBRが、2022年9月2日時点で1.15倍という水準なのです。
① 世界比較で安い
このPBRがどれだけ割安なのかを知るために、2022年7月末時点の世界各国のPBRデータと比較します。
下図は、国ごとに、PBRが低い順、つまり割安な順に並べたものです。日本のPBRは1.3倍となっており、中国と同水準です。(日経平均225の2022年7月末のPBRは1.18。更に割安)全世界平均の2.6倍や先進国2.8倍と比較すると、かなり割安と言えるのではないでしょうか。
これに対し、米国はPBR4.2倍です。今後の成長が見込めると考えたとしても、世界比較でも割高ではないかと、私は思います。
② 日本の過去との比較で安い
下図は、2004年9月30日から2022年9月2日までの日経平均225の株価データです。順調に、右肩上がりで推移しているということが分かると思います。
しかし下図は同じ期間の日経平均225のPBRデータなのですが、先ほどとは異なり、右肩下がりになっていることが分かるのではないでしょうか。
企業が利益をあげると、貸借対照表の純資産項目の一つ、「利益剰余金」の金額がその利益分増えます。つまり、事業活動をしてきちんと利益をあげられるような優良企業の株価は、基本的には毎年上がるはずです。純資産が増えたほど株価が上がらなければ、PBRは下がっていきます。また、歴史的に見てPBRが1倍を切ったのは、リーマンショック(2008年9月~)、コロナ(2019年12月~)のような、特殊な時期のみです。
2.日銀が買い続けているはずなのに
日銀は2010年12月、リーマンショックで低迷する株価や景気を底上げすることを目的に、ETFの買い入れをスタートさせました。更に、2020年3月23日に、日銀の黒田総裁が、「ETF について、従来の2倍のペースで積極的に買い入れる」旨の発言をしました。
実際のETF買入額は以下の通りです。
そしてこの資産買入れ方針は、2022年現在でも未だ継続しています。(下図は、2022年7月21日の「当面の金融政策運営について」より抜粋)
これだけ日銀が買入しているので、日本株は割高なのではないかと思わるかもしれません。しかし実際は、個人や海外投資家が同期間相当売り越しているので、高くなっていないのです。(参考:ETF年間売買状況)
日銀は、この資産買入方針が続く限り日本株を買い支えます。日本株式の株価は、今後安くなると思いますか?
3.日経平均225の企業は儲かっている
日経平均225に採用されている企業の過去5年間の当期純利益(産業別)は以下の通りです。
黄色の枠に記載の数字は、日経平均225に採用されている全銘柄の、各年度の当期純利益合計です。2021年度の225企業の当期純利益は、33兆7,742億円であり、過去5年間では最高額でした。(なお、NIPPON EXPRESSホールディングスは2022年1月4日に上場したため、過去データを省略しております。)
日本の企業が稼ぐ力は、少なくとも過去5年間の実績を見る限り、衰えていないのです。なお理論的には、株価は将来キャッシュフローを割り引いた割引現在価値をあらわすものですが、正確に将来を予測することに限界がある中、これまでの実績をきちんと見て、評価するべきだと思います。
225社分の、企業別の過去5年間の当期純利益データは、以下よりダウンロードできます。
そろそろ、貯金信仰を捨てませんか?
インフレが加速する(=物の値段が上がる)と、その分貨幣の価値は下がります。同じ金額で、買える物が減るからです。そのようなときは、貯金をしているつもりでも、その価値は少しずつ目減りしていってしまうのです。
日本の個人(家計)は2022年3月末時点で未だに、金融資産の大半を「現金・預金」として保有しています。
国民の銀行預金や貯金を投資に使ってもらうことを目的としたNISAが始まったのが2014年です。それから8年たった今でもこのような状態なのです。
下図の通り、NISA口座は未だに約1,700万口座です。(日本人の成人約1億500万人の約16%)
将来を考えて貯金をするのは良いことだと思いますが、その努力が少しでも報われるように、投資や経済にも目を向けてみることが大切だと思います。