チャールズ・エリス著『敗者のゲーム〈原著第6版〉 (日本経済新聞出版)』は、なぜインデックス投資が優れているのか、時間を味方につける長期投資がどれほど効果的か等を解説した、全米累計100万部を超えるロングセラーです。
投資で成功するために必要なことは、難しい証券分析などの専門知識や経験を身につけることでも、短期的に市場を出し抜こうとすることでもありません。インデックス・ファンドを活用することです。
本書より、以下の3つのポイントでご紹介します。
- 敗者のゲームとは
- 上昇の「瞬間」を逃さないために
- 個人投資家への助言
敗者のゲームとは
例えば、プロの試合の場合は、ほとんどミスはなく、目の覚めるような素晴らしいプレーをした方が勝ちます。これを「勝者のゲーム」といいます。一方、アマチュアの試合の場合は、相手のミスによる得点が多く、ファインプレーの有無というよりミスの少ない方が勝ちます。これを、「敗者のゲーム」といいます。
本書のタイトルが「敗者のゲーム」である理由は、投資が「敗者のゲーム」であるからです。つまり、ミスが少ない方が勝てるということです。
インデックス・ファンドへの投資は、市場平均リターンを確実にとっていく投資手法です。これに対してアクティブ ・ファンドや個別株への投資は、市場平均リターンを上回るリターンを得ることを目指す投資手法です。
例えば、法定速度を上回って運転すると、早く目的地に着けるかもしれません。しかしそれにより、より高度な運転技術が求められたり、事故を起こす(=ミスする)可能性が高まります。運転はレースではないので、ほどほどのスピードで運転し、きちんと目的地に到着することの方が大切なはずです。
「市場平均を上回るリターンを得ようとすること」は、法定速度を上回るスピードで運転することと同じです。早く大きな利益は得られるかもしれませんが、高度な知識が要求されたり、判断ミスする可能性もあります。
「敗者のゲーム」ではミスが少ない方が勝つため、「市場平均を上回るリターンを得ようとすること」 はかえって、不利な結果になる可能性が高いということです。
つまり、「敗者のゲーム」においては、 市場平均リターンを確実にとっていくインデックス・ファンドへの投資の方が良いということです。
上昇の「瞬間」を逃さないために
過去75年間(900か月)の長期で見ると、株価上昇の大部分は60か月(約7%)で達成しています。つまり900か月中60か月の上昇の瞬間を逃すと、900か月間という超長期間投資をしていても、利益を得られなかったということです。
さらに驚くべきことに、過去72年のうち、ベスト5日間という瞬間を逃すと、投資から得られた利益が半減していたことが分かっています。72年のうちの5日間とは、約0.02%です。上昇の瞬間を逃さないためには、それぐらい稲妻が輝くような一瞬に、相場に居合わさなければならないということです。
タイミングを見計らって「今は売り」、「今は買い」というようなタイミング投資をしていたら、この一瞬のタイミングの恩恵を享受できる可能性はどのくらいあるでしょう。確実にこの瞬間をものにするためには、ずっと市場にいる、買ったら売らずに持ち続けておく戦略を取ることになります。
本書では、これについて以下のように書かれています。
「投資家にとっては、株式に投資して長期間そこにとどまっている資金の運用成績が最高である。それが本書の中心概念で、基本的テーマの一つである。」
また、【株の知識③】長期投資が前提であれば、株式が圧勝。『 株式投資 』でも下図を用いて詳しく述べましたが、長期投資をすると、株式の利回りは安定的になっていきます。
加えて、過去の統計によると、株式を17年以上の保有すると、リターンがマイナスになることがなくなります。(つまり、長期保有をすれば損しません。)
ただし、この図が示す通り、短期的には大きくマイナスになることも、大きくプラスになることもあります。
ですので、たとえ貴方が株式のインデックス・ファンドを購入した直後から数年間マイナスの状況が続いたとしても、運用機関を変えたり、商品を途中で解約して買いなおすということはしない方が良いです。なぜなら、株価は下がった後には上がりますし、動けば動くほど(=売買を繰り返すほど)、手数料がかかるからです。
個人投資家への助言
本書で紹介されている、個人投資家への助言を、簡単に箇条書きで紹介いたします。
- 相場の先行きにかけることはやめましょう。市場参加者のほとんどは機関投資家、プロです。個人投資家がここに勝負をかけるのは、ギャンブルのようなものです。
- 貯蓄をしましょう。
- 自分の住宅を資産と考えてはいけません。
- コモディティ投資は考えものです。投機だからです。業者は儲かります。
- 証券会社の担当者の言いなりになってはいけません。多くは素晴らしい人ですが、彼らの仕事は貴方から儲けることです。
- 新しい金融商品に手を出してはいけません。
- 債券には投資してはいけません。債券にも株式と同様に変動リスクはあり、インフレにも弱いためです。
- 投資の方針や計画を書き出しましょう。直感を信じるのはやめましょう。
- どのような状況になろうとも、基本的には動かずじっとしていましょう。
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本書のメッセージは、シンプルです。
株式のインデックス・ファンドを買い、株価が上がっても下がっても何があってもなるべく売らず、市場に居続けましょう、ということです。
なお本書では、債券への投資は勧められていません。私自身も債券は保有しておりません。
しかし、本書の著者とバートン・マルキールの共著、『投資の大原則』では、株式債券の保有比率についても語られていますし、他にもポートフォリオに債券を組み込むことを勧めている本は多くあります。
貴方自身の方針や資産の状況等、様々考慮してポートフォリオをお考え下さい。
本書に興味を持っていただいた方、詳細は 『敗者のゲーム〈原著第6版〉 (日本経済新聞出版)』 をご参照ください。
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