2019年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の試算によって、「老後の30年で約2,000万円が不足する」という試算が示され、当時非常に話題になりました。
老後に泣くか笑うかは、ほんの僅かな知恵と知識の差です。横山光昭著『「貧乏老後」に泣く人、「安心老後」で笑う人 PHP文庫』より、老後に気を付けるべき点、お金が絡んだ注意点を、次の5つのポイントでご紹介します。
- 老老介護
- 熟年計画離婚
- 完全リタイア
- パラサイトの子供
- その他注意点
老老介護
老老介護とは、65歳以上の高齢者が自分と同じ65歳以上の高齢者を介護している状態のことをいいます。
下図は、厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」のデータですが、介護が必要な方がいらっしゃる世帯のうちの59.7%が、いわゆる老老介護だということが分かります。
また介護の平均年数は、4.9年と言われています。
介護年数を4.9年とした場合に介護にかかる費用は、①在宅の場合と②老人施設に入居する場合、それぞれの目安は次の通りです。老人施設に入居となると、1,000万円を超えることが分かると思います。
- 【在宅介護の場合】4.4万円/月 × 4.9年 = 258万円
- 【老人施設の場合】20万円/月 × 4.9年 = 1,176万円
いずれにしても、介護をする際にはそれにかかった費用を全て記録しておきましょう。介護により働くことが出来なくなった給料減額分や、病院に連れていくためにかかった交通費、その他経費等あらゆるものを含めます。これにより、相続時に兄弟よりも正当な理由で多く受け取ることが出来ます。証拠が必要ですので、きちんと保存しておくようにしましょう。
なお、現在『老後の資金がありません』という映画が公開中なのですが、ここに登場する姑が、月30万円の高級老人ホームに入り、元々2億円程あった財産を食いつぶすという浪費家っぷり。葬式代等々330万円も残さず逝ってしまい、それを息子さんが負担するという・・・
世の中にはこういう自分のことしか考えられない方も、一定数いらっしゃいます。介護する側もされる側もお互い、なるべくトラブルにならないようにしたいですね。
熟年計画離婚
50代くらいの女性で、「あと何年一緒に居れば、いくらもらえるかしら?」とFPである筆者に相談にいらっしゃる方が多いそうです。
それくらいの年齢になると退職金も共有財産ですので、勤務期間に対して婚姻期間が何年かによって妻が受け取れる退職金も変わるのですが、それをもらってから離婚する方が得と考え、退職金をもらう日を待ちわびている妻が多いということです。恐ろしいし、悲しすぎますね 。
男性は、「退職金をもらってこれから悠悠自適だ」と思っていた矢先に、妻から離婚を切り出され、取り分が半分に減ってしまうという可能性がありますので、経済的リスクを減らすためにも、奥さんへのケアを怠らないようにしてください!
なお最近、結婚をしない選択をする方も多いですが、夫婦関係が円満であれば、結婚をする方が経済的にもメリットが大きいことが分かっています。
OECDの計算によると、「同等の生活水準を目指す場合、大人二人の世帯は、一人の世帯の生活費の1.5倍しかかからない」ということが分かっています。家も水道光熱も通信も二人で共有できるので、その分規模のメリットが働くということです。今は共働き世帯が多い時代ですので、一人でいるより結婚した方が、規模のメリットにより余剰資金が増えやすいのです。
以前こちらの記事でご紹介した『1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました』にある通り、全米の億万長者世帯の92%が既婚カップルであり、離婚率は、億万長者でない世帯の1/3しかないことが分かっています。
完全リタイア
仮に65歳で引退する場合で、かつ、老後生活費を現役時代の50%に抑える場合、現役中にどれだけ貯蓄する必要があるかというと・・・
- 1945年生まれの方は、毎年年収の4.3%。
- 1971年生まれの方は、毎年年収の17.2%。
- 1998年生まれの方は、毎年年収の25%!
毎年年収の25%貯蓄し続けるのは、一般的にはかなり難しいですよね。若い世代の方は特に、趣味的な副業を作る等により、いつまでも完全にはリタイアしないことが大事です。完全リタイアしないことにより、生きがいを持ち続けることが出来、ボケ防止等、心身の健康にもつながると思います。
また、地道に貯蓄するだけでなく、きちんと勉強した上で、資産運用も積極的に行うと良いです。
パラサイトの子供
例えば、孫への生前贈与が1,500万円まで非課税になったことを利用して、息子や娘にせびられるということもあります。一旦贈与してしまうと、後から贈与を取り消すことは出来ないので、本当に自分の分を確保してからでないと、贈与するべきではありません。
「退職金あるんでしょ?」「年金あるんでしょ?」とせびられ、それを断れずに応じていては老後破産のリスクになりうるので、注意してください。
その他注意点
1.退職金で強気になる
お金は使うとなくなるものなので、退職金としてまとまったお金が入ってきたとしても、急に気が大きくなって一気に使ってしまうのではなく、計画的にコントロールして使うようにしましょう。
2.生活水準を下げない
老後は、現役世代のような金額の定期収入は見込めない方が多いと思います。現役時代のままの生活水準を維持しても問題ありませんか?生活水準を下げることも検討しましょう。
3.保険を見直さない
本書では、5年ごとに保険の見直しをすることがお勧めされています。
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老老介護も、 熟年計画離婚も、パラサイトの子供も、全て家族・親族間で起こりうるリスクですね。
普段から近しい人との関係を大切にすることが、幸せな老後生活を送れるかどうかの、重要ポイントになるといえそうです。
本書に興味を持っていただいた方、詳細は 『「貧乏老後」に泣く人、「安心老後」で笑う人 PHP文庫』 をご参照ください。
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